新品種の研究 セラード珈琲として・・・

コーヒー品種の研究

【品種改良の弛みない研究】

 

 セラードでは、同じ条件のもとで数多くの改良品種をテストしている。 私(萱間)は2007年度クロップからこの作業を毎年繰り返しているが、当社の山口カルロス彰男代表はさらに数年前よりこの地道な作業に取り組んでいる。

 ブラジルのコーヒー産業は品質よりも物量を追い求め続けてきた。 コーヒー大国の供給責任もあるが、このため生産量の少ない品種は必然的に淘汰され、農園主たちはヘクタール当たりの反収を競い合ってきた。 また病虫害の耐性を考慮してカネフォーラ種を掛け合わせた品種が多く開発され、次第に流通量も増えていった。 こうした傾向は、美味しさを測定するという共通の物差しがなかった時代の産物である。

 農園で収穫されたコーヒーは、エキスポーター等に重量で引き渡され、目視とカッピングによって格付けされ、顧客毎に求められる味作りがなされてきた。 しかし顧客の求める最高品質が必ずしも世界共通であるとは断定できないのも事実である。 ベテランの鑑定士達の中には「共通しないことがコーヒーの楽しい部分だ」という人たちもいた。 この風潮に「待った!」をかけるように、今世紀に入ってスペシャルティコーヒーの概念が世界中に広まった。 当社創業者の故・上原勇作がスペシャルティの概念を口にするようになったのは2000年前後。そして2002年にはスペシャルティ時代の到来が確信へと変わった。

 

  hinsyu1-1.JPG

 生産量を重要視することを私は否定しないが、すべてがその方向性を目指すことには異論を唱えたい。

不特定多数がコモディティクラスを日常的に飲用し、それらを標準品として認識することに拠って、スペシャルティコーヒーの特別な世界観は醸成されるのである。 要するにスペシャルティ市場の隆盛にはコモディティの存在は必要不可欠。スペシャルティの世界が急速に拡大し変化していく中で、どのようにコモディティと共存し、進化していくのか? 我々は、このワクワクするような未知の体験を現実にしているのである。

 セラード珈琲は、ブラジルで生まれ育ち、現在も半年をブラジルで過ごす日系ブラジル人の社長(山口カルロス彰男)をはじめ、経営陣に農園主など生産現場と直結した事業体制を敷いている。それだけに消費国で販売する商品開発は得意とするが、生産者と直結(直接取引)していることは、反面で不都合な問題も多い。 単にビジネス上の取引だけではなく、生産者はいつ商品化するか分からない段階からの研究をすることが多く、毎年繰り返されている。 その中でも品種改良は時間も投資も必要とするが、我社はこうした地道な作業を繰り返すことで、スペシャルティコーヒーの発展に少しでも貢献したいると考えたい。

 研究や開発途中の品種の説明は具体的にはできないが、改良品種については2007年ころから時々HP等で紹介している。 我々の仲間の一人である、ワグナー・フェレーロ氏は自主的に品種研究を行い、このために数本ずつ様々な品種を植え、栽培を始めて5〜6年間で数度のカッピングデータを収集して、新たな品種に植え替える作業を長年続けている。 そして良い結果が得られた品種を増産し、少量販売できるまでになっている。

 フェレーロ氏の研究は基本的には自営農園での木の順応性と味覚測定。 例えばイバイリ品種やティピカ品種は木が弱く生産量は低いものの、味が個性的で「販売価格とのバランスがとれるかもしれない」という評価の下で増産している。 これはフェラーロ氏自身の遊び心からくるスペシャルティへの創造性であり、希少価値があるからできる事である。 業界全体を考えた場合、希少価値云々ではなく大量生産且つ味の優れたものの研究が重要である。 また、将来コーヒーは地球温暖化の影響で現在の生産地では品質が維持できないと云われ、品質の維持には標高を上げるとか、気温の低い産地に移すなどの対策が必要とされている。 当然、標高を上げると栽培エリアは狭まり、生産量も極端に落ちることは否めない。 また気温の低い場所への移動は非常に困難でもある。 そんな中、気温上昇に耐えて品質を維持できる品種改良の研究が進められている、と期待できる話も現実にある。

 

 前述の話と直接関係はないが、我々はブラジルのカンピーナス研究所から依頼を受け、味覚チェックと木の成長データを取るため、同じ品種を異なる地域の数カ所で実験栽培を行っている。 品種改良の研究は非常に時間が掛かる、根気のいる仕事である。 具体的には、同研究所で染色体を掛け合わせてテスト的に作られた改良品種を何本も植え、その中から樹勢があり且つ味覚の優れたものを選び出すという作業。 研究所は標高700mに位置して最高の環境とは言えないが、そんな場所でも味覚評価で84点を超えるものが出ることがある。

 数年掛けてデータを取った後、なるべく多くの環境の異なる農園に植えていく。 この実験栽培は我々が直接農園主に依頼するのだが、農園側にとっては特にメリットがないとなれば嫌がられるだけ。しかし、場合によってはメリットになる話し(土産)を持っていくこともあるが、いずれにしても頼み込むのは一苦労。 中には栽培自体も特別の管理が必要な品種もあり、実際に何度も枯らしてしまったことも少なくない。 苦心続きの実験栽培ではあるが楽しいこともある。 それは今までに味わったことのない品種に出合えた時の感動である。 また一般的に生産されていない研究中の品種80サンプルが送られてきたこともある。 写真の通り開封時はブラジルの「コメ」や「麻の実」ではないかと見間違うほど驚いたこともあった。

 いつの日か、この研究(品種改良)によって新たな品種が誕生するのだろうか? しかし、たとえ無駄な努力であったとしても、セラード珈琲を取り巻く環境(産地直結)をして、この弛みのない品種改良の研究が止むことはない。

                                                                                                                                                                              2013年02月 kayama

2017年3月更新

 

hinsyu1-2.JPG

 

hinsyu1-3.JPG

 
 

pagetop